2019年2月25日月曜日

EキャブとCVキャブと私。


みなさまごきげんよう。


季節は冬を越えようとしている雰囲気で、つい最近まで雪が降ったりしていたのが

懐かしくは思いませんが本当に時間が過ぎ行くのがあっという間ですね。


あっという間というと2019年になってほぼ3ヶ月が過ぎてしまっていて

私は自身のバイクに乗らないままほぼ4ヶ月も過ごしてしまっていました。

お客様のバイクを預かっておきながら、自分は伸う伸うとバイクに乗る。と。

そういうのが申し訳ない気分で、当たり前ですがそりゃ皆さん乗りたいわけですから。

しかし今年からは定休日は絶対に休むと決めていて、密かに休む練習をしておりました。

主目的は2号機を手がける為なのですが、まずは休む事に感じる罪悪感を

コレをまず取り除かないといけないというわけでして

仕事、つまり作業自体が嫌という事が無いので始末が悪いのですが

訓練3ヶ月弱にしてようやく仕舞い込んでいたバイクに乗ってみた次第です。

そしてその理由づけとしてキャブをEキャブからCVへ戻してみました。


マニホールドを交換しないといけないので面倒くさいなと思っていたのですが

マニ交換の面倒くささの筆頭であるマニのフランジボルトを

工具がかかりやすい12ポイントのボルトに変更していたので楽ちんでした( ´∀`)

ここは本来六角穴付ボルトで、工具が入りづらく苛々するのですが

それはそれで恐らくトルク規制の為だと思われ

2次エア対策で締め過ぎるのを防止しているのだと思われます。

ここは構造上いくら締め込んでも2次エアは解消しないのは周知の通りなのですが。


そしてCV用ワンスロートキャブカバーキットにて仕上げますが

このキャブサポートは試作第1号でブリーザーホールが未加工で

加工方法も試行錯誤中でしたのでボルト穴の位置関係がちと微妙だったりするのですが

非常に思い入れの強い部品です。

4速ですのでヘッドのブリーザーはありませんから

固定ボルトは雰囲気重視にてスロッテッドボルトを使用しています。

パーカライズドっぽい表面処理はユニクロメッキを焼いただけだったりしますが。

で、このスロッテッドボルトは締め付けトルクを要する箇所には不適なのですが

ブリーザーボルトは肉薄でむしろトルクは弱い方がよろしいわけですから

ヘッドブリーザー車用のマイナス頭のブリーザーボルトを企画しようかなと。

雰囲気も良いですし、ブリーザーボルトを締め過ぎて折ってしまうトラブルも防げて

一石二鳥だと思います。


と、いうワケでスンナリとCVキャブに戻りまして

理由もできた事ですし久し振りに1号機を駆り出しました。


若干走るステージを間違えた感じで雪とかが残っちゃっていますが

移転前のEキャブ時代は走る場所が平地だったり高速だったりという事もあって

そのまま走るステージが峠中心に変わったのですが

私がメインで走っている勾配がきつくてツイスティーな峠だと

EキャブよりもCVの方がトルクの立ち上がり方が合っている感じです。

CVはEキャブに比べてトルクの出方がマイルドで

例えばコーナー立ち上がりでEキャブだとダッダッダッと路面を蹴るところが

CVではダダダダダッという感じで

全開するストレートも1秒に足らないくらいの我がホームコースでは

私の乗り方の場合はEキャブよりCVの方にアドバンテージがあるようです。

Eキャブでもタイヤがもう少しマトモであればトルク特性を生かせるのですが( ´∀`)

変な話、ロクでもないタイヤを履いているせいでトラクション管理がシビアで笑えますw


燃費もほとんど峠ガバ開けで走っても24km/lほどで

Eキャブで高速中心に大人しく走った時と同じくらいの数値ですので優秀ですね。

因みに以前Eキャブに交換した際の記事はこちら↓

これで飛距離がだいぶ伸びますので、少しは遠出してみたいなどと夢想する次第です。

言うてもワンタンク100kmのラインにやっと入っただけなのですが( ´∀`)

そして久し振りの1号機ですが

月並みな表現ですがやっぱり走っている間は何も考えなくてよく

たとえ数十分でも、それはこのトルクを直に感じている一瞬一瞬の積み重ねであり

私にとって必要不可欠の甘美な時間である事を再認識しました。

同時に、そういう時間へ連れて行ってくれて無事に家に帰してくれる

このオートバイを抱きしめたい気持ちでいっぱいになりました。

キモチワリーですがw

で、やはり皆さんにとっても同じ存在であるはずのバイクを

長々とお預かりするのはやはりよろしくなく

今の状況にきっちりケリをつけなければならないと襷を締めまして

来年度より少し体制を変えていこうと思っております。

因みに、現在お受けできる作業は

軽作業および車検を除いては4月以降のお預かりとなります。

ので、ご依頼の場合はお早めにご予約ご相談のほど宜しくお願い致します。


では


さらば!





2019年2月23日土曜日

4速スポーツスターXLH883。


さてみなさまごきげんよう。


本日お預かりは久し振りに4速スポーツスターで

それも87年式初期型の後期で非常に珍しい7本キャストを履いているXLH883です。

さらに珍しい事に純正風に塗られていますがタンクは95年XL1200のデカタンクですね。

内容的にはちょっとお色直しとお車検といったところで


まずはハンドル交換から。

純正のステンレス製プルバックですね。

細かい事ですがメーターケーブル等は取り回しを正しく直したりして

これだけでもかなりスッキリしたりします。


が、ライザーブッシュがへこへこにヘタっていてハンドルがガタガタですので交換。

ここが傷んでいる車両は非常に多く、当方での交換頻度も高いです。

ガタが出て無理くり締め上げてワッシャーが変形している例も多いですが

いくら締め付けてもワッシャーが変形するだけですので

潔く交換しましょうという感じです。

気づかぬうちにガタついてくるワケですが、ココがシャキッとすると

当たり前ですがバイクとの一体感が増します。


そして神戸グリップの2型縦溝が装着されておりますが

このグリップは握りが細い、つまり肉厚が薄いので純正や社外のスロットルスリーブだと

滑り止めのリブに乗り上げてしまい握りが四角くなってしまうので

リブを削り落とすと共に、スリーブを5mmほどカットしてあげると

ぴったりピタピタに気持ちよく組めます。


さらにおまけとして、グリップのパーテーションラインを

スイッチボックスやスロットルホルダーの分割線に揃えてあげるとさらに気持ち良いです

細かい上に超個人的感覚ですがw

あと、この場合グリップボンドは必須です。


そして改造へ進む前にまず前後ともブレーキがおかしい感じで

ローターは明らかに引きずっていた痕跡がありまして


パッドも殆ど当たっておらず。


キャリパーピストンは戻る事を忘れておりました。

因みに86年から87年までの4速スポーツはリアブレーキのキャリパーがガーリング製です。

ショベルFXRも同じキャリパーだったりして、隙間年式ならではですね。


どうも長期不動車をオコしたような感じで、オーナー様に伺ったところその通りでした。


ローターは摩耗と歪みが出ておりましたのでゴミ箱に棄てる事にして


たまたまストックしていた鉄ローターに交換しました。

と、言うのもあまり減っていないパッドはオーガニックパッドで

オーナー様はフロントブレーキ主体という事もあっての組み合わせです。

ローターボルトは新品交換ですね。


そしてマスターシリンダーからはフルードが漏れていました。

このロッドがブーツで隠れるタイプは少々の漏れですとブーツ内で完結してしまい

意外と気付きにくかったりしますので、ブーツに湿り気がある場合注意です。


これだけカップが痩せていれば漏れるのは当然ですね。

4速スポーツスターは87年後期からマスターシリンダーが変更になり

ガワこそ似ていますがインナーパーツは別物ですので注意です。

因みにCCIとかDSで扱っているインナーキットはどれも日本製で、

なんかちょっと安心する気分です( ´∀`)


で、主に使われているというフロントブレーキはパッドが斜めに減っていまして

ローターも偏摩耗しているのでこれれも交換する事としました。


フロントはラッセルのステンレスドリルドローターで、

パッドはSBSのシンタードという組み合わせにしまして


副産物的に前後ローターのデザインが揃ってカッコよろしいのと

個人的にはスポーツはリアブレーキがしっかり効けば楽しく走れるのですが

オーナー様の乗り方とフロントに強化スプリングを入れられている事から

リアよりフロントの方に重点を置いて

制動力が高くコントロールしやすい方向でいきましょうというところです。


そして今回はフロントフォークのインナーチューブも交換しまして

2インチオーバーの「チョイ上げ」でセットアップしていきます。

が、フォークは錆びて固着しており中々抜けません。。


分解しましたら錆びたフォーククランプ部はホーニングして錆を落としておきまして

いちいち言いませんがこの作業は当方では全車実施しております。

これをやっておくと、フォーク組み付けがスムーズなだけでなく

インナーチューブに変な傷を付けずに済みますし

次回の分解時も非常に楽になります。


ついでに初期型4速スポーツだけの特徴と言いますか

35mmフォークの中でもこのモデルはちょっと特殊で、パッと見は同じですが

フォークトップキャップのネジピッチが異なりますので

インナーチューブ交換の際にはこのトップキャップも用意しておかなければなりません。

で、交換するインナーチューブはスライダーブッシュが付く年式から選びましょう。


一通り作業を終えて、構造変更検査を受けますが。

何と純正スピードメーターでメーター検査に落ちてしまいました。

これまで450000kmの距離を重ねて来たオリジナルメーターだけに

社外品に交換して検査を通すのも勿体無いという事で。。

実際の速度よりメーター表示が低く出る事から、メータードライブ関連を整備します。

まずメーターケーブルですが、こちらは洗浄とグリスアップを実施しまして。

因みにメーターケーブルは適度な抵抗が無くてはならず

サラサラの油を注入して抵抗が無くなり過ぎると、メーターの針が踊る等の症状が出ます

ので、油は適材適所選びましょう( ´∀`)


そしてドライブユニットは分解できるだけ分解して内部の汚れや古いグリスを洗い落とし

ウレアグリスを詰めなおしまして無事に元のメーターで検査合格できました。


あとは持ち込み頂きましたショートなシガーサイレンサーを

前後共にブラケット製作して装着。


これも初期4速スポーツの特徴ですがサイレンサー交換する場合は

ブレーキペダルのストッパー兼アジャスターを設けてあげなければなりませんので

 見た目には同じような4速スポーツスターシリーズですが

86年から87年前期の初期型は87年後期以降と比べるとかなり違います( ´∀`)

ので、4速をお探しの場合はウィークポイントの対策の有無だけでなく

改造の方向性やどのように付き合っていきたいか等も考慮に入れておくと

作業面でもコスト面でも後々色々やりやすいと思います。

また、特に初期型でオリジナル度が高い個体は、改造ベースにするよりも

その良さや希少性を大事にして頂きたいと思います。

個人的意見ですが( ´∀`)


と、言うわけで全ての作業を終えまして

フォークは2インチオーバーでリアサスはハガーの11.5インチと

立ち姿的には純正キックスタンドのままでイケますし

乗り味もノーマルの良さを生かしつつ、予めリア荷重で乗る感じです。


ノーマルのスポーツスターはどちらかと言うと押さえ込む感じで乗りこなすのに対して

このくらいのチョイ上げスポーツはリラックスした姿勢になると共に

バイクが手の内に在る感が感じやすく、寸法は大きくなるわけですが

ポジションがコンパクトになり、気軽に流せるようになりまして

早い話がおススメなセットアップです。


2インチというとたったの5cm強という事で物足りなく感じるかもしれませんが

見比べてみるとこの位歴然と違いがあります。

因みに4インチオーバーであればリアは10.5インチ

それを超えてくるとサス的に我慢が必要だったり

ネック角的に厳しくなってきたりというネガも少しは出てきたりもします。

そこら辺お悩みの方はお気軽にご相談くださいませ。


それにしても純正ウインカーをはじめ素性が良かった事もあり

スポーツスターらしく非常に良い感じに仕上がったと思います( ´∀`)

エンジンも静かで調子はよろしい個体ですので

これからも大切に距離を重ねていってもらいたいですね。

ありがとうございました。



2019年2月18日月曜日

XL883R。


みなさまごきげんよう。


今回はこちらの2002年式883Rのイメージチェンジ作業を承りまして

とは言えども、オーナー様より暖かくなってからの仕上がりでも良いと仰って頂いており

そのお言葉に甘えさせて頂き、長期入庫となっております。


元はこのような車両ですが既に色々と改造されておりまして


黒エンジンに合わせるように黒いパーツで構成されていて

ワークスカラーとのコントラストもよろしい感じですが

もうちょっと大人っぽく、尚且つ地味に他と違うというか

マニア好みな感じに外装チェンジすると共に、消耗品をリフレッシュしていきます。


この潤んだ瞳のようなLEDヘッドライトと、ビキニカウルは生かす方向で


先ず、キャブ周りの変更からいってみたいと思います。

RSDの大きなファンネルが張り出していますが


ブリーザー一体型のワンスロートキャブカバーキットに変更しまして。


純正のガソリンタンクは旧型のスポーツスタータンクに変更して

オールドスクールな物と現代的な物をミックスした

ちょっとマッチョな古いスポーツスターというテーマで進めていきます。

が、小ぶりなスポタンでは容量が少なく不安です。

と、なると幅の広いキングスポタンといきたいところですが


オーナー様はタンクとシートの繋がりを気にされておりましたので

横幅だけでなく長さも長い、

つまり小ぶりなスポタンを拡大した形状の95年式純正のタンクを用意しまして


このタンクは容量とスポタンならではの形状を併せ持っているので

今回のようなコンセプトにはバッチリな感じで

しかもデッドストックの新品でちょっと奮発しましたが

エボスポ好きだけがわかる仕様といったところです。


キャブカバーの張り出しがかなり減って

丸みが無くなったタンクと同じく角ばったキャブカバーがよく似合っております。


シートとの繋がりもだいぶ埋まりまして良い感じであります( ´∀`)


因みに、ネックにキーシリンダーが移動したモデルですと

タンクとコイルのクリアランスを稼ぐとキーシリンダーが干渉してしまいますが

シリンダーカバーを加工しましてギリギリまで前に寄せる事で

キーシリンダーの移設を行わずにタンク換装できまして

シリンダー移設でハーネスをいじらずに済むのでお財布に優しいです。


そして高年式スポーツは21インチホイールのモデルとフェンダーを共用する事から

19インチモデルはフェンダーとタイヤの隙間がデカくて気になりますので


純正フェンダーをチョップしまして脚を短くすると


フェンダーとタイヤのクリアランスがピチピチになって素敵です。

Chopperの場合はフェンダー自体装着しなかったりしますが

今回のようなスタイルの場合は

ここの隙間がピチピチの方が格好よろしいと思います( ´∀`)


テールランプはちょっと小型化したい事もあってデュオテールに変更しまして。

フェンダーにテールランプ用の大穴が空いている年式の場合

最小限の加工と溶接にて、ご覧のようにオリジナルペイントを焼いてしまわず

スマートに取り付ける事が可能です。

今回の場合はどうせ塗り替えてしまうのですが( ´∀`)

因みに、このテールランプは裏に凸部があるので

結構フェンダーを加工しなければならず、装着は意外と面倒だったりします。

どちらかと言うと、高年式よりテールランプ裏に大穴が開いていない年代の方が

製作物が無い分少しだけ楽な感じです。


さらに、ポジション関係も修正していきまして

ハンドルバーがオーナー様の体格に対して少し遠い感じで

走行時にお尻が後ろにズレると仰られておりました。

つまりちょっと前に座っているという事で、ハンドルを少し手前に引いてあげることで

安定した位置に乗車してもらおうという作戦です。

このハンドル、見た目は純正ハンドルですが、グリップ部分が手前に絞られている

キジマのXLXスタイルバーという製品で

純正スタイルを崩さずにポジション変更したい場合、非常に役立ちます( ´∀`)

長らくお待たせしてしまいオーナー様には大変申し訳ないのですが

暖かくなったら心機一転気持ちよく走って頂けるように作業を進めていきます。

それでは一先ずごきげんよう。