後期型の距離が浅い全くのノーマル車両を探しに探しまして
見つけたのが走行距離12,000kmのこの個体です。
オーナーが間もなく免許取得と言う事で納車整備に突入です。
さて、走行距離12,000kmとなるとさぞ程度が良いと思われがちですが
果たしてどうでしょう。
とりあえず、この車体は錆が酷いです。
メッキのアンダーブラケットは
ペリッとメッキが剥がれる始末。
恐らく保管中に錆びちゃったんでしょうね。
20年間で12,000kmって、実際走行してる時間はかなり少ないワケです。
つまり動いていない時間は年単位ですから。
アンダーブラケットだけでなくインナーチューブにも錆があり
右側のフォークオイルが漏れてきているので
部品を揃えてオーバーホールしていきます。
ついでにステムもメンテナンスして
トリプルも中古ですが錆びていない物に交換するとします。
漏れていないけど劣化した左のフォークオイル。
距離的にも交換時期です。
オイルシールは汚いですが漏れは無し。
インナーチューブ摺動部にこの点錆びだと実走行したら漏れ始めますね。
対して漏れてた右側フォークのオイルは明らかに交換されていますね。
フォークオイルの劣化度合いが左右で違う事はあるのですが
これはそういうパターンじゃないです。
恐らく右側は一度バラしてあるっぽいですね。
長期放置車や低走行距離車の場合、こういったゴム類がまずダメです。
今回はオイルシールだけでなくインナーチューブも新品交換します。
オイルシールはお馴染みのアリートを使います。
ホントこのオイルシールは性能も耐久性も良くてお気に入りです。
当方では現在、ハーレーも国産車も全てこのオイルシールを使用しております。
ちっとセッティング変更してダンピングを強くしておきます。
ステムも綺麗にしておきまして。
トップブリッジも磨いたのですが、用意したのは前期の4TR用でして
後期型VH01Jはトップブリッジにブッシュ圧入でラバーマウント化されているので
トップブリッジは元のヤツを使う事としました。
おおー、スッキリした!
それにしてもこの純正のウインカーステーは秀逸です。
ゴムのベースに裏側は配線を通す溝がモールドされていて
軸にM8とかM10のぶっといスタッドやナットが出ない装着方法。
ウインカー自体もコンパクトで文句のつけようがありません。
なのにすぐ錆びる安物のウインカーを
これまたすぐ錆びてボルトやナットが露出しまくる安物のクランプで装着するとか
品質を落としたうえに大してスマートにもならない行為に金を使うとか
まったくどうかしてますよ。
せっかくウインカー交換するなら
高品質で高耐久でスマートに取り付けできるブツをセレクトしましょう。
おっと、、微量な毒を吐いてしまいました。
さて、距離浅の低年式車で大抵ダメなのがブレーキです。
動いていない=キャリパーピストンも出たまんまです。
まぁポンコツ慣れしていなくてこの状態を目にすると悲劇的な衝撃を受けましょうが
こんな状態でも結構大丈夫なんですよ。
いや、そのまんまはダメですよ。修理可能と言うことです。
オイルシールとダストシールは問答無用で交換しますが。
ちなみにピストンの状態がよろしくないのに揉み出しなんかすると事態が悪化します。
揉み出しする手間をかけるならピストン抜いちゃいましょう。
元の状態はパッと見サビサビに見えますが
意外とピストン自体に朽ち込みは少ないものなんです。
ピストンそのものが錆びるというより、積層したダストが固着して錆びてるんです。
ブレーキダストはブレーキパッドが擦り減った粉と思われがちですが
パッドのカスは殆ど飛んでしまうので
残留して錆びるのは殆どがディスクローターの削れカスつまり鉄粉です。
なのでこういう薄っすら錆びて汚らしいブレーキローターも
丁寧に研磨洗浄してあげるとこんなに綺麗になります。
綺麗にする事でパッドの当たり面やローターの摩耗具合もわかりやすくなりますし
何より気持ち良いですよね。
ローターボルトは新品交換です。
フロント周りの作業が続きまして
ドラッグスターやスティードに使われている銀色の配線被覆。
コレ、茶色く変色してキモい事になるんですよね。
被覆し直す事でかなり気持ち良くなります。
このボロ隠しにコルゲートチューブを被せたりしがちですが
アレはハンドルを動かすとパキパキうるさいし
柔軟性が無いので綺麗に取り回せず
尚且つ通気性も無いので
全くオススメ致しません。
純正でも意味のある箇所にはコルゲートチューブが使われていますが
バイクのハーネスをよーく見ておくと
どこにどういうモノが使われていて、その意図は何なのかがよくわかります。
何でも適材適所です。
錆びて汚いうえにケーブルを傷つけがちな鉄のガイドは捨てました。
クロームも綺麗でだいぶ引き締まりましたね🎶
メーターダッシュの固定ボルトも全て新品交換しました。
やっぱり常に目につく箇所は綺麗な方が良いです。
その後全体的に鬼洗車をかましまして。
1月のこの段階でも一度洗車していますが
佇まいがどよーんとしていて
引っ張り出されてきたポンコツ感が滲み出ております。
まぁどよーんとしているのは天気のせいもありますが( ´∀`)
パリッと!
ちなみにこの車両、バイク屋で普通に売られていた個体を私が普通に購入しました。
私はベース車としてしか見ていないので良いのですが
一般ユーザーが通販なんかでこの車両を購入しちゃったらマズいですよね。
後はキャブの同調とって中古新規登録して試乗してお渡し。
ボロいところはあるけど素性の良い車両だったので良かったですね。
まぁそういうつもりで購入してるんですが。
ホントこうして見るとよくまとまったデザインですよねぇ。
そういえば400のクルーザーがガラパゴスだと以前書きましたが
カワサキがエリミネーター400を投入してきましたね。
最近のカワサキはZX25RやらZX4Rやら、隙間をブスッと突いてきますな。
ちょいちょい傷や錆びはありますが、20年前の車両としては良いレベルかと。
ちなみにマフラーもバフポリッシュしています。
ヘッドライトは前期4TR用でスマート化。
誰も気付かないとは思いますが( ´∀`)
メッキパーツはひたすら磨きまくってあります。
ところで中古車が未だに人気の昨今ですが
低走行距離が有難いのは高年式車だけです。
低年式車の場合は走行距離よりもメンテナンス度合いを見た方がよろしいです。
通勤車と違って趣味のバイク自体はそれほど距離を稼がない個体が多いものの
車齢20年くらいが境い目になると思います。
例えば年間3,000km走れば20年で60,000kmです。
乗りっぱなしだととんでもねーポンコツですが
20年落ち60,000kmでも綺麗に維持してメンテナンスも怠っていなければ
年間走行距離にしてたった600kmのこの個体とはまた違った状態になるでしょう。
よく中古車選びのポイントを訊かれるのですが
距離だけを見るのではなく素性をよく見る。
額面だけ見てるのは一番良くないですね。
使われているパーツや改造、改良されている箇所をよく観察する。
そうすれば前オーナーがどういうスタンスで向き合っていたか
愛されていたのか飽きられていたのか
そういうことが浮き彫りになってきます。
良い車両は佇まいである程度わかるものですが
こんなところまで手を入れてるのか!
とか、こんなとこを綺麗にしてるのか!
みたいなポイントが多ければ多いほど良いですね。
どうしようも無いポンコツなのか、磨けば光る原石なのか。
あるいは最初から宝石なのか。
そういった佇まいを感じられる眼を養っておくと失敗が少なくなります。
イベントなんかに来ている車両とか、無造作に路駐されてる車両とか
通勤に酷使されてるスクーターなんかを見比べるとよくわかりますね。
まぁ車齢20年ともなると大幅な整備がほぼ確実に必要になってきますから
その辺もコストとして考えておく必要はあります。
これから細々と手を入れていくとどんどん良くなるなぁ。
ぼちぼちとボルトとか細かいパーツを交換していくのも楽しいですよね。
免許取得して初めてのオートバイ。
こういう仕事を任せていただけるというのは本当に有難い事です。
御用命ありがとうございました。
納車日が楽しみですね♪
それでは!
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ふらりと遊びに寄って頂くのは勿論大歓迎ですが、上記理由により不在の場合はどうかご理解ください。
尚、現在すぐにその場で作業可能なのはオイル交換や微細な調整等の軽作業のみとなります。
以上よろしくお願い致します。
RadJalopy 浜野建介