2024年11月12日火曜日

Triumphシッシーバー製作。

みなさまごきげんよう。

当方に入庫されるのは基本的には旧い車両が多く 

私自身もインジェクションだとか何だとかは苦手なんですが

時々高年式の車両がおいでです。


今回はバリバリ新車のトライアンフスピードツイン900さん。

装着するだけで充電できるスマホホルダーの取付と

充電用配線の取り出し、ポジション球のLED化プラス

パッセンジャー用のグラブバー兼、荷物を積みつつ背もたれにもなる

つまりシッシーバー製作のご依頼です。

社外品でグラブバーもキャリアも売っていますが

流石にシッシーバーは無いですからね。


しかし現行車っていうこともあって旧車とは全然造りが違うというか

シッシーバーをマウントするにはフレームと言うかシートレールの強度が無く


シートとフレームの隙間もたったコレだけしか無く


通常グラブバーを取り付ける部分はペラッペラの鉄板で

グラブバー程度であれば十分でしょうが

シッシーバーとなると振動や重さから超不安なので

ついでに社外品みたいに不細工にステーが露出しないように

ギリギリの寸法でナローに造っていく事としまして。


まずはベースの部分から。

曲げ物だと撓みが出そうなので溶接組みで

板厚は取り付け部の強度も考慮しつつ出来る限り確保し


ステーの露出は最小限に。


コレだけしか露出しないように製作。

シートレールの左右4箇所だけでなく

リアショックのアッパーマウントとも接続して

がっちり固定できるようにしていきます。


ベースは16パイの丸棒で、ループ部分は

万一荷物がズレた際にテールランプを隠さない為のガードで

フレームのエンドとテールランプの間がグラブバーになるという塩梅です。


案の定、4点留めの状態でベースのバーを持つと

バーごとシートレールが動きます。

ショックのアッパーマウントから後ろはホントにヘニョヘニョですね。

シートレールに必要以上の強度は要りませんし

きちんと強度計算のうえで設計されている物ですが

それ故に後から手を入れるのは大変です。


次いで立ち上がり部分もベースは丸棒で

左右の渡しは軽量化の為パイプに

センター部分は角棒で、2箇所M8のタップ穴を設けまして。


シートが脱着できるギリギリラインで仮付けしてオーナーに見ていただきまして。


OKをもらったら本溶接。


グネグネした曲げ物は野暮ったくなるので

ちょっとスポーティーな斜め立ち上がり。

角度は伝統の三段シートのソレですね(笑


最後に補強を入れて。


とにかく、こういった造り物は壊れない事、道路に落っことさない事が重要なので

コレでもかと言うほどガッチリ造っております。


そして車体に合わせてメッキではなく半艶のパウダーコート。

ラッカーやウレタンではすぐ剥げてしまいますし

荷物を縛るロープでも擦れてしまううえに

すぐ錆びてきてしまうので

費用はかかりますがしっかりブラストしてパウダーコート。

オーナー氏、カネを突っ込むところがわかってますね。


良い感じですが、ご要望のツーリングバッグの固定を叶えてゆきます。

このシッシーバーですと幅が狭すぎて

本来シートに固定するタイプのバッグではストラップが長すぎて

固定してもフラフラでして。

しかしそんな幅広なシッシーバーじゃダセェだろってトコですね。

とは言え策があってこの形状で造っているんですが。


解決策はこちら。

M8タップ穴を利用してオーバーキャリアの装着です。

コレなら荷物積まない時は外しておけばスタイリッシュなままですし


表にも裏にも荷物を固定できて


ストラップは荷掛けフック間に収まり上下の動きも規制。


左右のズレもなく


万一ストラップが切れても持ち手がこのように固定されているので

脱落の心配が無く

我ながら良く考えたもんです。

ま、物自体は自転車用のキャリアなんですけどね。

もちろん耐荷重もしっかりしています。


ってなワケで設計するのにモノスゲー時間かかってしまいましたが

恐らくシッシーバーをおっ立ててる現行トラは居ないと思われ


中々面白いお仕事でした。

あ、因みにバーはもっとシートに寄せろと目ざとく突っ込まれそうですが

パッセンジャーがリュックを背負うのと

シート脱着が後方スライドなのでこの位置です。


まぁバッグを反対側に取り付ければ隙間感は消えますよ。

だったらそっち向きにバッグを付けて写真撮れやって話ですが(笑


オーナー氏にも大変満足していただけて嬉しい限りです。

ワンオフパーツは高くつきますが

費用対効果も段違いに高いです。

折角造るならカッコ良くて長持ちが良いですしね。

ウチは改造屋ですのでこういった作業は当然承りますが

「安く済ませたい」というご要望には応えられませんので

そういった向きは妄想で楽しむか既製品を買っていただきたく

ご依頼の際は「本気の姿勢」でお願いしますね。

時々あるんですが、既製品の写真が送られてきて

「コレと同じものを」っていうパターン。

売っているのであれば量産品が絶対安いんだからソレを買ってください。

無いものは造る、無いものを造るのが当方のお仕事ですので

その辺りはご承知おきくださいませ( ´ ▽ ` )

そんなわけでさらば!





2024年10月17日木曜日

車検いろいろ。

みなさまごきげんよう。

ウチは改造屋なので車検といえば構造変更とか記載変更が多めですが

一般的な継続検査も陸運局持ち込みにて承っておりまして

陸運局持ち込み=誤魔化しはいっさいきかない

つまるにきちんと保安基準適合状態で受験しております。

通常の車両であれば週末お預かりで翌週末にお返しというパターンですので

リターンタイムはウチの作業としては短い方ですね。

重作業の間に割り込み可能ですのでお気軽にご依頼くださいませ。 


そんな車検の作業なんかを少しご紹介です。

こちらは2014年の883N、普段は社外のサイレンサーですが

純正サイレンサーに交換して頂いての入庫です。

高年式車は基本的に純正マフラー装着状態でお願いしますね。

音量、排ガスともに純正じゃないと通らないと思っておいてください。


某大手バイク買取業車から購入のこの車両

年間走行距離は10,000kmですのでよく走られている方ですが

1年10,000kmでエアクリーナーエレメントがこんなに汚れる事はありません。


エアクリーナーエレメントは24ヶ月法定点検の項目にも当然入っていますので

確認してこの状態であれば即交換です。

ちなみにビスカス式ですので清掃というのはありません。


車検を受けると必ず点検整備記録簿が書類入れに入っており

これは2年間携行する事になっていますので

車検が終わったら記録簿にも一度目を通しておくようにしましょう。

どこを点検してどの部品を交換したかをきちんと知っておくのは乗り手の義務です。


ブレーキフルードも10,000km程度でこんな真っ黒にならないです。


ブレーキパッドも限界間近ですので交換するとします。

これも本来なら2年前の車検時に交換しておくべきだったと思いますが。


当然、キャリパー本体、ピストンも綺麗に清掃。

車検時の確認で必ずキャリパーは外されるので

その都度清掃しておけばそれほど真っ黒に汚れずに済みます。


パッドはSBSシンタード。

安っすいオーガニックとかは良くないですよ。

状況によってはローターを磨くだけで全然効かず

ヘタすればローターもダメにしちゃいます。


この年式はフルードがDOT4で費用的には助かります。


ただ、マスターに明かり取りが無いのでフルードの色がわかりにくいので

日常点検ではタンク内の銀色が透ける角度で見てください。

まぁキャップ開ければ良い話なんですが。


リアブレーキもよろしくありません。

整備された形跡もゼロ。

パッドの残量に関しては車検時に「そろそろかな」であれば

迷わず交換。

次に見るのが2年後っていう可能性もありますので。


こちらもキャリパー本体やピストンを清掃して

新品パッド取り付け。


リアのフルードも2年やそこらの色ではないですね。

コレね、補償付き中古車ですよ。

私も補償付き中古車の購入を勧めますが

3ヶ月やそこらでは出ない不具合も当然あります。

補償付きであっても、記録簿の確認と現車の状況をキチンと見る事です。


こういう事言ってると同業である自分の首も絞まるワケですが。

自分の首が絞まろうが事実は事実。

バイクは嘘つかないです。


まぁ一般的な消耗品交換でゼロスタート。

これも車検制度のメリットではあります。


普段は社外のスリップオンで大きな音を出しているようですが

燃調的にはリーンっぽいですね。

FI車なので何となくは動いちゃいますが

その辺は要改善という事でお渡し。


こちらは95年式ですから世間一般では旧車扱いのゼファー400。

ブレーキ周りを最近リフレッシュしていますので綺麗なものです。

定期的に入庫している車両はそういうところが強いですね。

こちらも車両状態をある程度把握できていますから。


しかし2年前は問題なかったヘッドライトの光量で車検落ちまして。

バルブを交換してもダメ。


リフレクターがもうダメになっちゃってるんですね。

マルチリフレクターの悲しいところ、、

これは中華製の安物ではなくスタンレーのちゃんとしたユニットですが

経年劣化は避けようもありませんで。


丁度、マルチリフレクターではなく旧車っぽいヘッドライトに交換したかったので

何か良いの無いですか?と。

昨今ではマーシャルがハバをきかせていますが

私個人的にはCIBIEです。

ホント言うとホンダ純正のケースが薄いアレが1番好きなんですけどね。

アレにするとヘッドライトを目一杯後ろに寄せられるんですよ。

そうするとセパハン組んだりした時にガチッとまとまり感が出るんです。


でもこのCIBIEの薄いリムとレンズカットはやっぱ良いなぁ。

それでも昔と比べて品質が落ちてる感はモリモリでした。

CIBIEのデカールも無いですしね。

そういやこのライト、当時ウエダレーシングで買ったなぁ。

マーシャルも好きですが今のヤツはね、、

猫が先行しすぎてわざとらしいと言うか、マルチリフレクターもあるし。

商品としては今の時代良いんでしょうけどねぇ。

やっぱ凸レンズの刻印猫ですよね。


まぁそんなわけでヘッドライト交換して再度検査受けてお渡し完了ってな具合です。

普通の車両から改造車まで、車検は随時受け付けておりますので

お気軽にご相談ください。

先にも述べたようにリターンタイムは1週間、週末預かりの週末お渡しです。

あまりに保安基準に適合しない車両はその限りではありませんので

不安な方は相談だけでもどうぞ!

ってなワケでさらば。



2024年10月7日月曜日

97XLHハーネス引き直し③

 みなさまごきげんよう。

入庫車両が溜まりまくりならBlogの下書も溜まりまくりでして。

インスタにホイホイアップしてりゃイイ話かもですが

作業記録としてはやっぱりBlogが役に立つもので。

まぁとっくに終わった系の話も随時アップしていきたい所存です。

お話はハーネス引き直しの97XLHさん仕上げ作業。

細々したところを仕上げてお渡しまでですね。


こちらのシートレールに乗っかる形でフェンダーマウントボルトと共締めの鉄板は

サドルシートの受けになっていますが。

長距離走行用に純正シートを取り付けようと思い外そうとしたら

ボルトナットに変更されていて簡単に取り外しできず困るので

簡単に取り外せるようにしてほしいとの事。

ですが私としては余計な物を付けていない方が良いという考えですので


シートのストッパーをシートレールに当たるように移動させる位置変換ブラケットを製作。

板を外せるようにするのではなく、板が要らないようにすりゃイイじゃんという考えですね。


単純なようで意外と複雑な形状です。

シートから生えているスタッドは袋ナットにして防錆と保護を。

これであの鉄板とはおさらばですね。


こうしておけば前方のマウントボルトを外すだけで純正シートに戻せます。


ハーネス引き直しで折角スッキリしたシート下ですから

やっぱりスッキリしてるのがいいですな。


そしてブレーキランプスイッチを機械式から油圧式に変更していますので

ブレーキフルード交換。

フルードの色もそうですが沈殿物がありエアも噛みまくりな状況でした。

ブレーキフルードは最低でも車検毎に交換しましょう。


ちなみにですが、フロントマスターに油圧スイッチを取り付けると

スイッチが介在する分タッチが悪くなります。

まぁそれは特にラジポンの場合ですが。

この辺がハーレー業界の他と違うところというか

故障が多くタッチが悪くなる油圧スイッチを機械式にする世界もあれば

機械式スイッチの故障が多すぎて油圧スイッチにする世界もある。

まぁフロントブレーキが担う役割がちょっと違うハーレーというか

グリメカマスターの圧送力というか

まぁ油圧スイッチでそこまでシビアにならなくても大丈夫です。

グリメカマスターだと油圧スイッチでタッチが云々以前にボア径がミスマッチで

油圧レシオがおかしい事態の方が散見されますですよ。


フロントがあの様子だとリアも然りだろうとチェック入れます。

色も色ですが、、


タンク内が汚すぎる。

マスターシリンダーの構造としてはリザーブタンクとしてのアルミのガワに

カートリッジ式にシリンダーが内蔵されているこの時代のハーレーのリアマスターは

その構造からリターンポートが目視できないうえにスラッジも溜まりやすいので

タンク部分がこういう様子だとよろしくありません。

ここ最近はユーザー車検で通されてきたと思いますが

バイク屋さんが行う車検時の油脂類交換って無駄な費用じゃないんですよね。

ユーザー車検は私自身否定は全くしないというか

むしろ車検自体、本来はユーザーが行う義務ですが

時にはバイク屋さんで点検整備受けての車検も良いと思います。


むらさきだちたるフルードのたなびきたる、、、

油面は後のパッド交換の事も考慮して低め設定。

ここで満タンにしておくとパッド交換した際に溢れてきちゃいますから。

そういう事もあるのでパッド交換時にフルードも交換しちゃうと良いです。

フルードの油面調整せずパッドだけ交換して終了パターンは後の作業者が泣きますしね。


次いでプライマリーカバーを磨くためにステップの固定ボルトを緩めたら

プライマリーオイルが漏れるようになってしまったとの事でガスケット交換します。

クラッチランプはライトクラッチ。

コレ調整がシビアなんですよねぇ。


まぁガスケット交換ですから作業はサクサクと、、進みませんで。

シフターアームが固着しまくりで外れませんの刑。


このシフターアーム、割りが入っていてピンチボルトで締め上げますが

ピンチボルトはあくまでもスラスト方向のズレと抜けどめであって

回転方向の負荷はスプラインが担っています。

ですので必要以上の締め込みは意味がありません。

こじって割りを広げなければならないほど締めつける必要は無いのでご注意。

ピンチボルトがM6相当の太さである事を見ればその役割もわかりますね。

特に4速スポーツのアームは締め付けすぎると簡単に割れますので

このサイズのボルトの規定締め付けトルクをちゃんと知って

無駄に部品を壊さない整備を心がけたいですね。

因みに4速スポーツはコレがすぐ割れます。


シフターシャフトは錆を落として今後固着しないように

スプライン部にはウォータープルーフグリスを塗布

次回スムースに作業できるようにしておきます。


プライマリーケース内も洗浄してガスケット交換して組み戻し、

プライマリーオイルを入れてクラッチ調整すれば作業終了。

カバーを開けるので事前にエンジン始動してステーターの発電量もチェック済みです。


40kmほど試乗して電気系に異常も出ないのでお渡しです。

最も問題がよく起きていたという雨の中でのチェックはしていませんが

電装関係の怪しい箇所は全て潰してありますので大丈夫かと。

ハーネス引き直しは費用がかかりますが効果絶大ですので

特に純正ハーネスをグチャグチャに改造されている車両などは

要らぬトラブルや火災防止の為にもお勧めです。

何より、配線が綺麗な車両は一味違う感をバリバリに醸し出しますので

次はどこ改造しようかなとか悩むようであれば

要らん事したりせずにハーネスに手を出すのも良いと思います。

それではさらば!