この非常に美しいベアメタルボディを纏った車両は1940年式のリンカーン・ゼファーで
あまりにも普通にベアメタルなのであまりにも普通ですが
当然普通じゃなく、と言うか尋常じゃない一台です。
およそ80年も前のボディをベアメタルで見せていると言う事は
とんでもないメタルワークを繰り返さなければ成し得ない事で
このグリルの一本一本の整列具合やフェンダーとボディーの均等なチリ
ウルトラスムーズでハンダすら入れていないボディー外板と
多くのボディーパネルを作り直して、元のボディーを使った部分は丹念に板金されて
しかも純正ではセミモノコックでシャシとボディーが繋がっているのですが
これを分離してシャシとボディーを別体にしてある。
つまりフロアなんかも全面的に張り替えられていて
もう殆ど車を一台作っているレベルです。
自然なラインでチョップされたルーフも
アラが出がちなピラーまで超自然なラインをフルメタルワークで作ってあり
細かい事にレインガーターまで作りこまれています。
この辺のラインも凄く綺麗で、最初からこういうデザインであったかのように自然。
普通はチョップトップの辻褄合わせでこの辺はガタガタで
それをハンダなりパテなりで整形するのが当たり前っちゃ当たり前で
塗ればわからないところなワケですがいやはやスゲーです。
スゲーうえにこの美しい造形ですからたまらんです。
こういうのが本当に凄いってやつなんですよね。
作り直されたフロアもサービスホールのカバーや
ホイールハウスにかぶったバッテリーボックス(多分)の蓋に至るまで鬼のような作り。
ベアメタルの外板に対して丹念に塗り込まれた防錆プライマー。
インナーフェンダーのルーバーも
サスペンションアームを避けるインナーフェンダーに合わせて作り直されていて
オリジナルの補強を生かしている事もあって超自然ですね。
ベアメタルでこの迫力ですから
これが完成したとなればそれはそれはものすごい事になるでしょうね。
完成がめちゃくちゃ楽しみっす。
んでこっちのゼットもスゲーんですが、巷で言うところの旧車的凄さでなく
普通にスゲーカッコいいです。
日本の旧車テイストとローライダー、USDMといった色々な要素がミックスされていて
それでもガチャガチャにならずに独特の路線で綺麗にまとまっていますよね。
左ハンでなく敢えて右ハンがベースになっているのも狙っていると思います。
旧車マニアが大好きなワンテールに行かずに敢えてのツーテールもワザとですねきっと。
そして色の使い方がめちゃくちゃ上手くて
透き通るような深い艶のある少しパールが入ったようなリンゴ飴みたいな赤が
それはそれは美しくて30Zのボディに良く似合っていました。
これでドアミラーだったら台無しだったでしょうねぇ。
クォーターとリアゲートのサンルーバーなんて懐かしのパーツですが
ヲタク臭を感じさせず、黒面積の一環として取り入れている感が強いですね。
深いレッドのボディにクロームとポリッシュが似合うのは当然として
敢えて過度なワイヤータックを行なっていない所も反骨精神を感じます。
そしてローライダーよろしく床面に鏡を敷いたディスプレイと、それに耐えうる仕上げ。
ローライダーの皆さんの凄いところのひとつは異様なまでの車底部への拘りですが
そりゃここまで仕上げたら見せないと勿体無いです。
こういう普段見えないところに拘るのが偉いっていうワケじゃないんですよ。
たとえ誰にもわかってもらえなくても
信念を貫くって言うことが偉いんです。
ドアノブにはエングレービング。
私はこの車両が制作された経緯は当然知りませんが
好きなものを好きな車に投入したんじゃないかなと。
もちろん、全部乗せしようとすれば大いにズッコケる可能性も大きいわけですが
つまりは匙加減とセンス、引きどころの見極めが絶妙なんですね。
まぁ私ごときが語って何になるっていう事なんですが、
今回の写真の2台の主張しない主張というか
たとえ他人に理解されなくとも、カッコ良さを絶対基準に壮絶な作業を積み重ねていく
そのスタンスに脱帽した次第です。
私もそうありたいな。
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