2024年10月17日木曜日

車検いろいろ。

みなさまごきげんよう。

ウチは改造屋なので車検といえば構造変更とか記載変更が多めですが

一般的な継続検査も陸運局持ち込みにて承っておりまして

陸運局持ち込み=誤魔化しはいっさいきかない

つまるにきちんと保安基準適合状態で受験しております。

通常の車両であれば週末お預かりで翌週末にお返しというパターンですので

リターンタイムはウチの作業としては短い方ですね。

重作業の間に割り込み可能ですのでお気軽にご依頼くださいませ。 


そんな車検の作業なんかを少しご紹介です。

こちらは2014年の883N、普段は社外のサイレンサーですが

純正サイレンサーに交換して頂いての入庫です。

高年式車は基本的に純正マフラー装着状態でお願いしますね。

音量、排ガスともに純正じゃないと通らないと思っておいてください。


某大手バイク買取業車から購入のこの車両

年間走行距離は10,000kmですのでよく走られている方ですが

1年10,000kmでエアクリーナーエレメントがこんなに汚れる事はありません。


エアクリーナーエレメントは24ヶ月法定点検の項目にも当然入っていますので

確認してこの状態であれば即交換です。

ちなみにビスカス式ですので清掃というのはありません。


車検を受けると必ず点検整備記録簿が書類入れに入っており

これは2年間携行する事になっていますので

車検が終わったら記録簿にも一度目を通しておくようにしましょう。

どこを点検してどの部品を交換したかをきちんと知っておくのは乗り手の義務です。


ブレーキフルードも10,000km程度でこんな真っ黒にならないです。


ブレーキパッドも限界間近ですので交換するとします。

これも本来なら2年前の車検時に交換しておくべきだったと思いますが。


当然、キャリパー本体、ピストンも綺麗に清掃。

車検時の確認で必ずキャリパーは外されるので

その都度清掃しておけばそれほど真っ黒に汚れずに済みます。


パッドはSBSシンタード。

安っすいオーガニックとかは良くないですよ。

状況によってはローターを磨くだけで全然効かず

ヘタすればローターもダメにしちゃいます。


この年式はフルードがDOT4で費用的には助かります。


ただ、マスターに明かり取りが無いのでフルードの色がわかりにくいので

日常点検ではタンク内の銀色が透ける角度で見てください。

まぁキャップ開ければ良い話なんですが。


リアブレーキもよろしくありません。

整備された形跡もゼロ。

パッドの残量に関しては車検時に「そろそろかな」であれば

迷わず交換。

次に見るのが2年後っていう可能性もありますので。


こちらもキャリパー本体やピストンを清掃して

新品パッド取り付け。


リアのフルードも2年やそこらの色ではないですね。

コレね、補償付き中古車ですよ。

私も補償付き中古車の購入を勧めますが

3ヶ月やそこらでは出ない不具合も当然あります。

補償付きであっても、記録簿の確認と現車の状況をキチンと見る事です。


こういう事言ってると同業である自分の首も絞まるワケですが。

自分の首が絞まろうが事実は事実。

バイクは嘘つかないです。


まぁ一般的な消耗品交換でゼロスタート。

これも車検制度のメリットではあります。


普段は社外のスリップオンで大きな音を出しているようですが

燃調的にはリーンっぽいですね。

FI車なので何となくは動いちゃいますが

その辺は要改善という事でお渡し。


こちらは95年式ですから世間一般では旧車扱いのゼファー400。

ブレーキ周りを最近リフレッシュしていますので綺麗なものです。

定期的に入庫している車両はそういうところが強いですね。

こちらも車両状態をある程度把握できていますから。


しかし2年前は問題なかったヘッドライトの光量で車検落ちまして。

バルブを交換してもダメ。


リフレクターがもうダメになっちゃってるんですね。

マルチリフレクターの悲しいところ、、

これは中華製の安物ではなくスタンレーのちゃんとしたユニットですが

経年劣化は避けようもありませんで。


丁度、マルチリフレクターではなく旧車っぽいヘッドライトに交換したかったので

何か良いの無いですか?と。

昨今ではマーシャルがハバをきかせていますが

私個人的にはCIBIEです。

ホント言うとホンダ純正のケースが薄いアレが1番好きなんですけどね。

アレにするとヘッドライトを目一杯後ろに寄せられるんですよ。

そうするとセパハン組んだりした時にガチッとまとまり感が出るんです。


でもこのCIBIEの薄いリムとレンズカットはやっぱ良いなぁ。

それでも昔と比べて品質が落ちてる感はモリモリでした。

CIBIEのデカールも無いですしね。

そういやこのライト、当時ウエダレーシングで買ったなぁ。

マーシャルも好きですが今のヤツはね、、

猫が先行しすぎてわざとらしいと言うか、マルチリフレクターもあるし。

商品としては今の時代良いんでしょうけどねぇ。

やっぱ凸レンズの刻印猫ですよね。


まぁそんなわけでヘッドライト交換して再度検査受けてお渡し完了ってな具合です。

普通の車両から改造車まで、車検は随時受け付けておりますので

お気軽にご相談ください。

先にも述べたようにリターンタイムは1週間、週末預かりの週末お渡しです。

あまりに保安基準に適合しない車両はその限りではありませんので

不安な方は相談だけでもどうぞ!

ってなワケでさらば。



2024年10月7日月曜日

97XLHハーネス引き直し③

 みなさまごきげんよう。

入庫車両が溜まりまくりならBlogの下書も溜まりまくりでして。

インスタにホイホイアップしてりゃイイ話かもですが

作業記録としてはやっぱりBlogが役に立つもので。

まぁとっくに終わった系の話も随時アップしていきたい所存です。

お話はハーネス引き直しの97XLHさん仕上げ作業。

細々したところを仕上げてお渡しまでですね。


こちらのシートレールに乗っかる形でフェンダーマウントボルトと共締めの鉄板は

サドルシートの受けになっていますが。

長距離走行用に純正シートを取り付けようと思い外そうとしたら

ボルトナットに変更されていて簡単に取り外しできず困るので

簡単に取り外せるようにしてほしいとの事。

ですが私としては余計な物を付けていない方が良いという考えですので


シートのストッパーをシートレールに当たるように移動させる位置変換ブラケットを製作。

板を外せるようにするのではなく、板が要らないようにすりゃイイじゃんという考えですね。


単純なようで意外と複雑な形状です。

シートから生えているスタッドは袋ナットにして防錆と保護を。

これであの鉄板とはおさらばですね。


こうしておけば前方のマウントボルトを外すだけで純正シートに戻せます。


ハーネス引き直しで折角スッキリしたシート下ですから

やっぱりスッキリしてるのがいいですな。


そしてブレーキランプスイッチを機械式から油圧式に変更していますので

ブレーキフルード交換。

フルードの色もそうですが沈殿物がありエアも噛みまくりな状況でした。

ブレーキフルードは最低でも車検毎に交換しましょう。


ちなみにですが、フロントマスターに油圧スイッチを取り付けると

スイッチが介在する分タッチが悪くなります。

まぁそれは特にラジポンの場合ですが。

この辺がハーレー業界の他と違うところというか

故障が多くタッチが悪くなる油圧スイッチを機械式にする世界もあれば

機械式スイッチの故障が多すぎて油圧スイッチにする世界もある。

まぁフロントブレーキが担う役割がちょっと違うハーレーというか

グリメカマスターの圧送力というか

まぁ油圧スイッチでそこまでシビアにならなくても大丈夫です。

グリメカマスターだと油圧スイッチでタッチが云々以前にボア径がミスマッチで

油圧レシオがおかしい事態の方が散見されますですよ。


フロントがあの様子だとリアも然りだろうとチェック入れます。

色も色ですが、、


タンク内が汚すぎる。

マスターシリンダーの構造としてはリザーブタンクとしてのアルミのガワに

カートリッジ式にシリンダーが内蔵されているこの時代のハーレーのリアマスターは

その構造からリターンポートが目視できないうえにスラッジも溜まりやすいので

タンク部分がこういう様子だとよろしくありません。

ここ最近はユーザー車検で通されてきたと思いますが

バイク屋さんが行う車検時の油脂類交換って無駄な費用じゃないんですよね。

ユーザー車検は私自身否定は全くしないというか

むしろ車検自体、本来はユーザーが行う義務ですが

時にはバイク屋さんで点検整備受けての車検も良いと思います。


むらさきだちたるフルードのたなびきたる、、、

油面は後のパッド交換の事も考慮して低め設定。

ここで満タンにしておくとパッド交換した際に溢れてきちゃいますから。

そういう事もあるのでパッド交換時にフルードも交換しちゃうと良いです。

フルードの油面調整せずパッドだけ交換して終了パターンは後の作業者が泣きますしね。


次いでプライマリーカバーを磨くためにステップの固定ボルトを緩めたら

プライマリーオイルが漏れるようになってしまったとの事でガスケット交換します。

クラッチランプはライトクラッチ。

コレ調整がシビアなんですよねぇ。


まぁガスケット交換ですから作業はサクサクと、、進みませんで。

シフターアームが固着しまくりで外れませんの刑。


このシフターアーム、割りが入っていてピンチボルトで締め上げますが

ピンチボルトはあくまでもスラスト方向のズレと抜けどめであって

回転方向の負荷はスプラインが担っています。

ですので必要以上の締め込みは意味がありません。

こじって割りを広げなければならないほど締めつける必要は無いのでご注意。

ピンチボルトがM6相当の太さである事を見ればその役割もわかりますね。

特に4速スポーツのアームは締め付けすぎると簡単に割れますので

このサイズのボルトの規定締め付けトルクをちゃんと知って

無駄に部品を壊さない整備を心がけたいですね。

因みに4速スポーツはコレがすぐ割れます。


シフターシャフトは錆を落として今後固着しないように

スプライン部にはウォータープルーフグリスを塗布

次回スムースに作業できるようにしておきます。


プライマリーケース内も洗浄してガスケット交換して組み戻し、

プライマリーオイルを入れてクラッチ調整すれば作業終了。

カバーを開けるので事前にエンジン始動してステーターの発電量もチェック済みです。


40kmほど試乗して電気系に異常も出ないのでお渡しです。

最も問題がよく起きていたという雨の中でのチェックはしていませんが

電装関係の怪しい箇所は全て潰してありますので大丈夫かと。

ハーネス引き直しは費用がかかりますが効果絶大ですので

特に純正ハーネスをグチャグチャに改造されている車両などは

要らぬトラブルや火災防止の為にもお勧めです。

何より、配線が綺麗な車両は一味違う感をバリバリに醸し出しますので

次はどこ改造しようかなとか悩むようであれば

要らん事したりせずにハーネスに手を出すのも良いと思います。

それではさらば!





2024年10月2日水曜日

79CBX1000キャブレターオーバーホールと同調。

 みなさまごきげんにょう。

いきなり涼しくなりましたなぁ。

これからが油冷や空冷の季節。

たまにゃ誰かとつるんで走ったりしてみたいと思ってみたり。

まぁそんな計画でも立ててみたりしますかね。


さて作業は人間ドックならぬバイクドック入庫のCBX。

キャブレターをオーバーホールしていきます。

長編なので飽きずに最後まで読んでもらえるか不安ですが、、

オーナー氏はCBXがオーバーフローによるガスハンマーで

コンロッドがシリンダーをブチ破る様を目の当たりにした事があるらしく。

ここいらで同調含めてリフレッシュしたいとの事です。


まぁ6気筒車でキャブは幅をおさえる為にV字配置なので

キャブを取り外すにはエンジンをチルトさせなければなりませぬ。

なんてバイクだ!


コレ、もしセッティング失敗したり

キャブの組み間違いが後で発覚すると

もう一回この作業しなきゃいけないんですよね。

まぁチルトしてしまえば普通の4気筒より楽ですが。

何にせよあんまり何度もやりたくないので

キャブは一発でキメたいところです。


外観的には綺麗なもんですね。

とにかく初めて触るキャブなので

サービスマニュアルを熟読し

ある程度工程を頭に入れておきまして。

何でもイメージって大事ですからね。


そして何より有難いのは部品取り用キャブが用意されていた事です。

今回はこちらのキャブから色々と剥ぎ取るので

まずこちらのキャブからバラして少しでも慣れていきます。


部品取りキャブの状態が思ったより良かったので

連結ステーやビス類、ショートパーツは

部品取りキャブと元のキャブから選りすぐって

オリジナル状態に近く仕上げる事とします。

因みにここで言う状態が良いというのは

あくまでも金具やビスの頭なんかの話で

キャブとしてはだいぶ死んでいて

部品取りキャブを復元するとなると相当なコストがかかります。

部品取り後も、もしもの時の為にストックですね。


内部パーツは毎度の岸田精密さん。

6気筒分なので壮観ですなぁ。

純正部品もまだ出る部品があるのは確認しましたが

フロートバルブ6個でもちょっとビビるプライスで

燃調キットにはご相談パーツも含まれていて

もうホントありがたいくらいリーズナブルです。


片方3気筒分での交換部品。

キャブ1個として見れば普通のキャブですが、作業精度を揃えるのが大変ですよね。

最初の1個と最後の1個。

作業に慣れてきて最後は雑になるのか

慣れない最初の1個がおかしくなるのか

初めてっていうのと慣れっていうのはね、どちらもリスクをはらんでるなと。

どれだけニュートラルに、イメージをもって取り組むかが大事だと思います。


左グループ完成っと。

部品取りキャブのメッキが生きていたので綺麗になりました。


トップカバーはKEIHINの文字やらを削ってクロームしてあります。

キャブとしてはバブやエフと近しいですかね。


右側グループ。

ここで右端の4番のキャブが基準になります。

キャブ個々の連結はスロットルバルブとチョークのバタフライシャフト

V字の連結はメッキのブラケットによります。


連結時のビスの締め込み順が指定されている通り

このキャブも他に漏れず整列が命ですから

左右の組みを連結する際に不手際があると各部の動きに差が出てしまいます。


左右3つずつのキャブを連動させるロッドは

アルミ製のパイプの中にスプリングとシートを仕込み

スロットルのボールを挟み込む事で少しの予圧を与えつつ

ダンパー的な役割を果たす丁寧なもの。

今回上側のシートが左右とも失われていたので、

ダストブーツと共に部品取りキャブから頂戴しました。


フッ素グリスを薄く塗布してくんでいるので効果は高いでしょう。

まぁね、このリンクは良くできていますが慣れるまでは結構イラつきますね。


やっぱり6連になると壮観ですねぇ。

これがリビルトレベルになるとホント飾っときたいくらいビカビカになるんですが

あんまりやりすぎもね、バイクとの調和もありますし。

オーナーのご希望は整備されてる感を醸し出す事ですので。

ちなみにキャブ再生専門のファクトリーに頼むとホント凄い仕上がりになります。

そしてそういう業者さんに丸投げしちゃいたくもなりますが。

オーナー氏が私に依頼する理由がね。

多分ですが「知ってほしい」だと思うんですよ。

最初にお預かりした時「まず走らせて6発というバイクを知ってください」と。

教えるんじゃなくて知り合いたいという姿勢ですよね。

そして私も知りたがりだと。


一晩ガソリン通してリークチェック。

フロートバルブを馴染ませる意味もあります。

組んでコックONでダダ漏れ!

となればまたエンジンチルトですから。


支給品の新品インシュレーター使用にて組み付け。

社外品ですが硬化した純正より良いでしょう。

問題は耐久性かな。

ちなみにこのバイク、スロットルケーブルもキャブを外さないと外せませんので

非常にバイク屋さん泣かせではあります。


CBX1000は生まれる時代が早すぎたとよく言われます。

今の技術であればFIを採用して軽量に効率よく設計して6気筒サウンドを楽しめるでしょう。

でも多分違うんですよね。

こういう手間隙とか効率の悪さのうえで成り立つからCBX。

クルマで言えばL型みたいな立ち位置かなと。

LはやっぱりRBにはなりたがらないワケで。

まぁL型みたいな屈強さは無いからS20の方が近いか。

なんで日産のハナシやねんw

いやでもCBXのエンジンって中身は結構クルマっぽいんですよ。


与太話はさておき、エンジンの位置出しをキチンと行いつつ本来の姿に。

元々ダブルクレードルで進んでいた設計がダイヤモンドフレームになったワケですが

もちろん6本の排気管が美しくフレームを逃げられなかったのもあるでしょうけれど

整備性の面もあったんでしょうね。


今回はリフレッシュ作業なのでプラグコードも交換。

モールドじゃなくてねじ込み式のコイルなのでコードは7mm。

7mmのコードはNGKでいくとコレかレーシングケーブルですが

ちょうど元と同じ配色のコードがあったのでコチラで。

まぁ無けりゃ作るんですけどね。

製品としてあるならそれがベストです。


元のコードはだいぶヤレていたので綺麗サッパリ感満点です。

ひび割れが出ていたコイルも割れていない物に交換。


全て組み戻したらエンジン始動させて調整に入りまして。

6気筒なので4番基準に5と6を揃えてから3、2、1ですね。

机上で揃えてはいますが、実際の負圧で見ていきます。


で、同調を取るとなると必須なのがこのSST。

キャブスロットルレンチ。

8mmのロックナットを緩めつつマイナスでアジャストスクリューを調整しますが

特にCBXはスペースが狭いのでSSTは必須。


だがしかし、6番のアジャストスクリューのみレンチが入らない。。

ナナメにいけば何とかなるのか?

でもロックナット締めただけで同調狂うワケですからナナメはイヤだ。

ホントどうやっても真っ直ぐレンチが入らないんです。

個体差とかいうレベルじゃないと思うんですが。


ロックナットを緩めるレンチは一般的なものと比べてこのくらい小さく

その辺にある工具では到底代用がききませんので。


こんなモノを造りまして。


ベッセルのドライバーのグリップをカットして


5番と6番専用のスロットルレンチが完成。


このようにして使います。

ノブではなくレンチで回す為に6角にしてあるのもスペースが足らないから。

これで真っ直ぐレンチが入る🎶

この写真からも純正SSTじゃどだい無理なクリアランスなのがおわかりいただけるかと。


そして同調。

6連のゲージを貸して頂いたので楽チンです。

やっぱり道具は大事ですね。


後はロードテスト。

あまりに記事が長いのでひとまずさらばです。

現在の車両お預かり状況ですが

重整備、ハードカスタムは最短12月〜

車検やオイル交換は随時大丈夫です。

少しでも早くお渡しできるよう進めていきますので

何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。