みなさまごきげんようでございます。
色々な作業と並行して渋滞しているブッ壊れた郵政車両を修理しております。
スーパーカブのエンジンは頑丈と言われ続けてきましたが
そもそも基本的にレシプロエンジンって頑丈なんですよね。
サラダ油でも走るとか言われますが
カブに限らずどんなエンジンもサラダ油でとりあえずは動きますし
オイルが無くても動くと言ってもオイルが切れたらどんなエンジンもぶっ壊れます。
して何故にカブのエンジンが頑丈という神話が生まれたのかと言うと
よく売れた車両である事とシビアコンディションで使われる事が多く
ぶっ壊れる寸前まで追い込まれる機会が多かったからじゃないかと。
私が一番よく直しているJA10は脆弱になったとも言われますが
それでもとんでもない状態でとりあえず動いちゃってます。
実際焼き付いて始動不能になるケースの原因は殆どがオイル切れで
ビロビロに伸びたカムチェーンでバルタイ狂いまくりでもなんとか動いています。
で、焼き付くケースはカムチェーンがビロビロになって
シリンダーを削って穴が開く事によるオイル切れと
もう一つ多いのがこのカムチェーンでオイルポンプを駆動する為のスプロケットの
軸部と歯車部が剥離してしまいオイル供給が止まるパターン。
このパターンは何の前触れもなく起こりますしダメージも深大になります。
この車両は剥離寸前、ギリギリセーフでした。
しかしカムチェーンテンショナーはプッシュロッドがアームを突き上げて
プッシュロッドによってテンショナーアームが削られている状態。
プッシュロッドの頭にはゴム製のダンパーがくっついていますが
それが摩滅して金属同士が接触すると
強度の弱いテンショナーアームがどんどん削られていきます。
当然、カムチェーンにはテンションがかからないのでカムチェーンは暴れ
ガイドローラーなんかを無駄に壊しながらカムチェーントンネルを切削します。
とにかくカムチェーンの音が気になるレベルになったら
プッシュロッドヘッドの交換だとかで誤魔化そうとせず
面倒で費用もかかりますが適切な分解整備を行わないと
壊滅的にエンジンを壊してしまう結果に繋がります。
そしてカムチェーンの音が酷い=カムチェーントンネル工事が進んでいる車両は
その削り粉が遠心フィルターにてんこ盛りに溜まって
コイツが鉄とアルミの混じった粘土でこれまた悪さをします。
この車両はまだマシかな、、
本当はこのくらい綺麗でないといけません。
と、言うかここも定期的に清掃しておいた方がよろしいです。
この遠心式のオイルフィルターというのはよく考えられていて、
オイルフィルターとしてはかなり強力なもので
身近なところではランドローバーのTD5エンジンにも取り付けられています。
しかしこの遠心式オイルフィルターというヤツは存在を知られる事が少ないので
通常のフィルターやストレーナーと併用されている場合などは
新車から全く交換や清掃を行われていなかったりして
要はそういう事をよく知っているところで整備しないとオイル交換も無駄になります。
まぁカブ系エンジンの車両に乗られている皆さんはよく知っていると思いますが。
ストレーナーとフィルターローターのカバー。
ローターカバーにはガスケットがありますが、
コレの隙間にもスラッジがビッシリ溜まりますので
ガスケットは必ず交換しましょう。
これだけのアルミと鉄の粉がオイルに混じっているわけですから
オイル通路とクランクケース底部に溜まった汚れも流す必要があります。
で、そんなオイルを一生懸命送っていたオイルポンプも当然傷んでいます。
ので、カムチェーン周りをメンテする際は
カムチェーンスプロケットとオイルポンプは必ず交換するようにしましょう。
左右ともクランクケースカバーを開けないといけないので手間は増えますが
これらを行わないで目に見えてダメな部品だけを交換すると
とりあえず異音は直りますが寿命は半分くらいになり
下手するとオイルポンプが止まって焼き付くハメになります。
エンジンってのはとんでもない状態まで追い込まれても
ぶっ壊れるまで健気に動き続けているカワイイ奴です。
たっぷり愛でてあげようではないですか。
ではさらば!
。
。
。