さてみなさまごきげんよう。
本日お預かりは久し振りに4速スポーツスターで
それも87年式初期型の後期で非常に珍しい7本キャストを履いているXLH883です。
さらに珍しい事に純正風に塗られていますがタンクは95年XL1200のデカタンクですね。
内容的にはちょっとお色直しとお車検といったところで
まずはハンドル交換から。
純正のステンレス製プルバックですね。
細かい事ですがメーターケーブル等は取り回しを正しく直したりして
これだけでもかなりスッキリしたりします。
が、ライザーブッシュがへこへこにヘタっていてハンドルがガタガタですので交換。
ここが傷んでいる車両は非常に多く、当方での交換頻度も高いです。
ガタが出て無理くり締め上げてワッシャーが変形している例も多いですが
いくら締め付けてもワッシャーが変形するだけですので
潔く交換しましょうという感じです。
気づかぬうちにガタついてくるワケですが、ココがシャキッとすると
当たり前ですがバイクとの一体感が増します。
そして神戸グリップの2型縦溝が装着されておりますが
このグリップは握りが細い、つまり肉厚が薄いので純正や社外のスロットルスリーブだと
滑り止めのリブに乗り上げてしまい握りが四角くなってしまうので
リブを削り落とすと共に、スリーブを5mmほどカットしてあげると
ぴったりピタピタに気持ちよく組めます。
さらにおまけとして、グリップのパーテーションラインを
スイッチボックスやスロットルホルダーの分割線に揃えてあげるとさらに気持ち良いです
細かい上に超個人的感覚ですがw
あと、この場合グリップボンドは必須です。
そして改造へ進む前にまず前後ともブレーキがおかしい感じで
ローターは明らかに引きずっていた痕跡がありまして
パッドも殆ど当たっておらず。
キャリパーピストンは戻る事を忘れておりました。
因みに86年から87年までの4速スポーツはリアブレーキのキャリパーがガーリング製です。
ショベルFXRも同じキャリパーだったりして、隙間年式ならではですね。
どうも長期不動車をオコしたような感じで、オーナー様に伺ったところその通りでした。
ローターは摩耗と歪みが出ておりましたのでゴミ箱に棄てる事にして
たまたまストックしていた鉄ローターに交換しました。
と、言うのもあまり減っていないパッドはオーガニックパッドで
オーナー様はフロントブレーキ主体という事もあっての組み合わせです。
ローターボルトは新品交換ですね。
そしてマスターシリンダーからはフルードが漏れていました。
このロッドがブーツで隠れるタイプは少々の漏れですとブーツ内で完結してしまい
意外と気付きにくかったりしますので、ブーツに湿り気がある場合注意です。
これだけカップが痩せていれば漏れるのは当然ですね。
4速スポーツスターは87年後期からマスターシリンダーが変更になり
ガワこそ似ていますがインナーパーツは別物ですので注意です。
因みにCCIとかDSで扱っているインナーキットはどれも日本製で、
なんかちょっと安心する気分です( ´∀`)
で、主に使われているというフロントブレーキはパッドが斜めに減っていまして
ローターも偏摩耗しているのでこれれも交換する事としました。
フロントはラッセルのステンレスドリルドローターで、
パッドはSBSのシンタードという組み合わせにしまして
副産物的に前後ローターのデザインが揃ってカッコよろしいのと
個人的にはスポーツはリアブレーキがしっかり効けば楽しく走れるのですが
オーナー様の乗り方とフロントに強化スプリングを入れられている事から
リアよりフロントの方に重点を置いて
制動力が高くコントロールしやすい方向でいきましょうというところです。
そして今回はフロントフォークのインナーチューブも交換しまして
2インチオーバーの「チョイ上げ」でセットアップしていきます。
が、フォークは錆びて固着しており中々抜けません。。
分解しましたら錆びたフォーククランプ部はホーニングして錆を落としておきまして
いちいち言いませんがこの作業は当方では全車実施しております。
これをやっておくと、フォーク組み付けがスムーズなだけでなく
インナーチューブに変な傷を付けずに済みますし
次回の分解時も非常に楽になります。
ついでに初期型4速スポーツだけの特徴と言いますか
35mmフォークの中でもこのモデルはちょっと特殊で、パッと見は同じですが
フォークトップキャップのネジピッチが異なりますので
インナーチューブ交換の際にはこのトップキャップも用意しておかなければなりません。
で、交換するインナーチューブはスライダーブッシュが付く年式から選びましょう。
一通り作業を終えて、構造変更検査を受けますが。
何と純正スピードメーターでメーター検査に落ちてしまいました。
これまで450000kmの距離を重ねて来たオリジナルメーターだけに
社外品に交換して検査を通すのも勿体無いという事で。。
実際の速度よりメーター表示が低く出る事から、メータードライブ関連を整備します。
まずメーターケーブルですが、こちらは洗浄とグリスアップを実施しまして。
因みにメーターケーブルは適度な抵抗が無くてはならず
サラサラの油を注入して抵抗が無くなり過ぎると、メーターの針が踊る等の症状が出ます
ので、油は適材適所選びましょう( ´∀`)
そしてドライブユニットは分解できるだけ分解して内部の汚れや古いグリスを洗い落とし
ウレアグリスを詰めなおしまして無事に元のメーターで検査合格できました。
あとは持ち込み頂きましたショートなシガーサイレンサーを
前後共にブラケット製作して装着。
これも初期4速スポーツの特徴ですがサイレンサー交換する場合は
ブレーキペダルのストッパー兼アジャスターを設けてあげなければなりませんので
見た目には同じような4速スポーツスターシリーズですが
86年から87年前期の初期型は87年後期以降と比べるとかなり違います( ´∀`)
ので、4速をお探しの場合はウィークポイントの対策の有無だけでなく
改造の方向性やどのように付き合っていきたいか等も考慮に入れておくと
作業面でもコスト面でも後々色々やりやすいと思います。
また、特に初期型でオリジナル度が高い個体は、改造ベースにするよりも
その良さや希少性を大事にして頂きたいと思います。
個人的意見ですが( ´∀`)
と、言うわけで全ての作業を終えまして
フォークは2インチオーバーでリアサスはハガーの11.5インチと
立ち姿的には純正キックスタンドのままでイケますし
乗り味もノーマルの良さを生かしつつ、予めリア荷重で乗る感じです。
ノーマルのスポーツスターはどちらかと言うと押さえ込む感じで乗りこなすのに対して
このくらいのチョイ上げスポーツはリラックスした姿勢になると共に
バイクが手の内に在る感が感じやすく、寸法は大きくなるわけですが
ポジションがコンパクトになり、気軽に流せるようになりまして
早い話がおススメなセットアップです。
2インチというとたったの5cm強という事で物足りなく感じるかもしれませんが
見比べてみるとこの位歴然と違いがあります。
因みに4インチオーバーであればリアは10.5インチ
それを超えてくるとサス的に我慢が必要だったり
ネック角的に厳しくなってきたりというネガも少しは出てきたりもします。
そこら辺お悩みの方はお気軽にご相談くださいませ。
それにしても純正ウインカーをはじめ素性が良かった事もあり
スポーツスターらしく非常に良い感じに仕上がったと思います( ´∀`)
エンジンも静かで調子はよろしい個体ですので
これからも大切に距離を重ねていってもらいたいですね。
ありがとうございました。
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