2024年9月22日日曜日

77XLH。

 みなさまごきげんよう。

残暑が厳しいですが

朝晩はオートバイにだいぶ優しい気温になってきまして

私も走り回りたいところですが

ちょっと仕事が溜まりすぎ(汁

調子に乗って預かり台数増やしたらやっぱりダメですね。


さて今回は以前NSGを取り付けさせていただいた77XLH

1000のアイアンですね。

ご依頼内容はリアタイヤ交換と

全く効かないリアブレーキの確認と

長年開けていないというEキャブの整備です。


リアタイヤはウチでは定番のIRC GS11で。

リア18インチはアイアンのサイズだと

クラシカルなパターンで性能もマトモなタイヤが多く

ハイグリップのTT100GPやK300GPも選べるので

タイヤ選びでも遊べる幅がデカくて何よりです。


タイヤ交換自体はサクッと終了。

サクッととは言ってもアイアンあたりだと普通のバイク屋さんや

量販店さんだとちょっと困っちゃうかもですね。


で、全然効かないというブレーキは散々見てきたコレです。

アームの逆組み。

何台直したかなコレ。


アイアンのブレーキカムは国産車でよくある平板でシューを押し広げるのではなく

方向性持たせてあります。

写真でいくと丸い方がシューを押すわけですね。

これは初期制動の立ち上がりやコントロール性を求めた結果ですが


アームを下向きに組むとカムの動きは反対になるので

角い方でシューを広げるようになり

シューのストロークも少なくなりますし、スムーズに動かないであろう事は一目瞭然。

では正しい向きにアームを持っていけばそれで解決なんですが

車両によってはそう簡単に片付かない。


この車両はリアブレーキがケーブル引きの年式ですが

ホイールベースが長くなるボルトオンハードテールが装着されており

ドラムパネルに設けてある本来のケーブルの受けが遠くなり

ケーブルの長さが足りない。

そこで純正ケーブルのネジ部を切って延長アダプターを接続

フレーム下側に新たにケーブルの受けを設置という工法です。

そもそもブレーキパネルの受けを使おうと思っても

クリアランスが無く使えないワケですが。

これを正しく作動するようにするとなると

リアセクションをきちんと設計し直して作り直す必要がありますが

今回はできる限りの範囲内で作業していきます。


アームを本来の向きで引けるようにケーブルの受けを製作して溶接。

クリアランス的にはもうココしかありませんでした。

が、この位置は正しくないんです。

引く方向としてはわかりやすく言うとアクスル中心方向にできる限り近くなければならない。

どういう力をかけたいか

いかに効率よくもっていくか

その辺を理解していれば、こんな方向にアームを引くのは間違いです。

が、現状で最も効果的なのはココでした。


私としては100%でいきたいですが、これだと70%の出来です。

それでも以前のノーブレーキ状態と違って格段にブレーキが効くようになったので

今回はこれで許してください。

それにしてもこういうところをおざなりにしてカスタムバイク製作とか

そういうのはどうなんですかね。

修理に出しても「こんなもんです」「調整しときました」

そして結果は何も変わらない。

誰かが「作り方が間違ってるんだよ」って言わなきゃね。

嫌われてもいいんですよ。元々好かれてないですから。

ダメなものはダメ。

私はそういうスタンスです。


アームを引く方向が変わったので

アクスルプレートに(何故か)溶接されているFLタイプのブレーキランプスイッチは

使えなくなってしまうので別所に設けなきゃいけないのかと思いましたが


純正の位置にちゃんとスイッチあるやんけ(壊れてるけど)。

スイッチ交換してブレーキランプも普通に点灯するようになりました。

ココにスイッチある事に気づかなかたのか?


続いてEキャブをきちんとオーバーホールしてほしいとのご依頼なので

キャブを分解していきます。

この辺のキャブは単純構造だから作業性は良いのですが

洗って組み直すだけでは全然ダメなんですよね。

特にOリングなどなどのゴム系パーツをきちんと交換する。

それに尽きます。


加速ポンプは死んでますね。

どういうワケか軽視されがちな加速ポンプですが

コレがちゃんとしてないとセッティングも出ないです。


Oリングはかな潰れていますね。


負圧のキャップも亀裂。

二次エアー吸い込みます。


加速ポンプのロッドのブーツはバラバラ。

キャブにとって気密は超重要です。


フロートバルブはどういうワケか吊り具が曲がっています。

これで適切な油面が出るワケありません。


ひたすら汚れを落として消耗品交換。


ココのOリングも劣化していると不必要な燃料を吸い上げてしまい

燃調が狂います。

キャブのオーバーホールは基本的に消耗品の交換。

洗っただけでは結果がついてきません。

もう一段階上となると各部の再メッキやバタフライの製作

シャフト関係の交換等、所謂リビルドになりますね。


ウチはキャブ屋じゃないので一般的オーバーホールですが。

よほど傷んでいない限りはこのレベルで調子は戻ります。


ちゃんとしたリペアキットを用いるのも大切です。

今やキャブのインナーパーツなんてAmazonでも楽天でも格安で売っていますが

長期的に見て信頼できるパーツをセレクトしないと

「オーバーホールしてもらったのに調子が出ない」

という意味不明な状況を招き

関係ないところに手を入れまくって沼にハマるという事態に陥るので

何を選ぶかはほんと重要です。


ロードテストしてお渡しOK。

実際に試乗していただき、いつもの往復10kmコースをご案内しましたが

待てど暮らせど戻って来られず、、

こりゃトラブったかとお迎えに走りましたが

あまりにも乗りやすくなっていて山のてっぺんまで行っちゃいましたとの事で

きちんと走れるようになったようでなによりです。

そのままお渡しして任務完了となりました。

現在お預かり車両制限中につき、ご予約は11月〜となります。

シーズンオフでメンテナンスや改造のご依頼が集中する時期が近づいております故

作業ご依頼の場合は早めのお問い合わせ、ご予約をお願いいたします。

それでは

さらば!