2024年7月6日土曜日

57FLと造り手に対するリスペクトの話。。

 みなさまごきげんよう。


本日ぼ入庫車両は57FLつまりハイドラです。

よく造り込まれたBobberである事は確かですが

輸入新規で検査3年付の「お許し」を貰うところまで終わって

いざ走らせてみるとブレーキは全然効かないし

あれこれ何かおかしいのでちゃんとしてほしいというご依頼。


タンクはナロー加工して沈め込み、非常に手間がかかっています。

塗装も1957年式則ったもので造り手は57である事を大事にしていたんでしょう。


綺麗なラインで幅詰めされています。

これはセンス良いですよね。


ただお仲間からは「なんか微妙」と言われてしまうようで

そこら辺は国内法規に適合させる為に行われた作業のせいで

バイクは何一つ悪くない雰囲気です。

この幅広なサドルシートはちょっとスタイルにそぐわないとは思いますが。


全然効かず、レバーからケーブルが弾け飛んだというフロントブレーキ。

入庫時はレバーが外されていましたが

トラやBSAに使われているコニカルハブの2リーディングドラムが

効かないはずは絶対無いので見直していきます。


元々がサイドナンバーであったこの車両ですが

スタイルをワケわからなくさせているのは

シッシーバー調の棒に適当にマウントされた

安っすい汎用のテールランプとナンバーステーのせいである事は明らか。


まずココから片付けていくとします。


元々のフェンダーステーを溶接延長してランプを設置したようですが

溶接痕にしてはおかしいですよねぇ。


部品を外して見ると、これがBobberにあるまじき装備であるシッシーバーだとわかります。

折角ボディラインを低く造っているのに

こんな事したら造り手は悲しむでしょう。


そして溶接部チラ見えするパテ。


剥がすとご覧の通りで

溶接不良とかいうレベルではなく

溶接できていません。

コレで仕事としてお金をいただく神経が理解不能ですが

実際こういう事例は多いです。

もし溶接伴う作業を依頼する場合は

完成形はともかく溶接時の写真を見せてもらってください。

溶接のビードなんて素人目に見てもマトモかどうか判断つきます。

個人的には超小型LEDテール縦置きサイドナンバーがベストなんですが

流石にそんな改造は今のご時世許されませんので、、


クロッカーレプリカの、小型タイプテールを使い

センターナンバーかつ車両に合った灯火とします。


とは言え、元々がラウンドしたフェンダー用であるうえに

この車両はフェンダーのエンドが微妙に跳ね上げという粋な仕様。

ですのでテールランプの形状とフェンダーの形状が全く合いません。


フェンダー加工が手っ取り早いですが、塗装は温存したいですし

跳ね上げ加工の大変さはよくわかっていますので


テールランプ側を削りまくって形状を合わせていきます。

ラウンド形状で跳ね上げですから単純な形状ではないのですが

ここで妥協して無理やりボルトナットで締め上げると

塗装が割れたりフェンダーが変形したりと要らぬダメージを与えてしまうので

根気よく形状を合わせていきます。


フェンダーにピッタリ沿う形状に行きつきましたら

今度はナンバーが地面と水平になってしまうので

ナンバーステーの製作へ。


フェンダー後端がアクスルの中心線上という教科書通りの造りですので

ナンバーにも泥除けの役割をしてもらうべく

角度を決めて部材を溶接していきます。

私自身、他人の溶接をどうこう言うほどのウデは持っていないと思いますが

少なくとも走行中取れちゃうような事はありません。

1号機のフレームは10年間折れてませんので。


まとまりのある収まりになりました。

本来は穴をあけてボルトナットで固定するだけの部品ですが

さらにコストをかけて

ただ取り付けただけでなく

自然と取り付ける。

そういう労力厭わないのが改造屋だと個人的には思っています。


まぁこの様子を目の当たりにして

フェンダーに対してテールがピョコンと飛び出してるじゃねーかバカヤローと

激しい突っ込みを入れてくれるのがココ見に来てくれている皆さんだと思いますが

ご安心ください。

大きなサドルシートナローなソロ&ピリオンに変更するので

背面のラインは綺麗に埋まって整う予定です。


車両を見ればお金と手間をかけて組み上げられた事は明らかですが

どんな理由があろうとも

それを愚弄するような改造は罪悪だと思っています。

それはメーカー出荷車両にしても同じで

私の変わらないスタンスでもあります。

格好よくするための改造であり

より気持ちよく走る為の改造であって

そこには造り手に対するリスペクトがなけれいけないと。


この57FLビルダーが

自分の手がけた車両が遠く日本の島国で

きちんと手を入れながら愛されている事を喜んでもらえるように。

もちろん、オーナーにも

この車両を所有し走らせている事を心から誇りに思ってもらえるように

引き続き作業を続けていきます。

それでひとまずさらば!





2024年7月2日火曜日

71XLHヘッドオーバーホール。

 

みなさまごきげんようコウバ長です。


本日は6年前から色々と手を入れさせて頂いております71XLH900。

エンジン不動でお預かりでしたが、圧縮測るとリアバンクが300kpaからスーッと落ちて

圧縮がゼロに。

典型的なカーボン噛みというかバルブがだいぶ沈んでる雰囲気。


さてここでエンジンをどう直すかでオーナー様には色々悩んで頂きまして。

希望としてはBUELLモーターやエボモーターへの積み替えもご検討頂きましたが

↑改造熱が盛り上がりすぎ

とりあえず頭を冷やして、症状的にまずヘッド降ろして状況を確認して

ヘッドOHでいけそうなら今のエンジンを修理するという方向に決定しまして。

ついでにマグ点火はやめて

バッテリーを搭載してダイナSとNSGで確実な点火できちんと燃料を燃やす事にします。


ピストンはオーバーサイズ入っていますので過去に開けたとして

リアバンクのヘッドボルトはユルユル。

シリンダーベースナットも確認したらユルユル。

ウチは改造車の入庫も当然多いんですが

ガワばっかりでエンジンや足回りがクソな車両が少なくないんです。

この車両も元々リアブレーキもステムもガタガタで

走るためのセットアップに時間とお金を費やしてきてるんですよね。

最近もとある車両を整備しましたが

エンジン組んだばかりなのにオイル漏れまくりで

構成部品もバイクの基本がなってないうえに

挙句の果てには試乗でミッション脱落という惨状でした。

そういうのは一部の車両だとわかっているんですが

少なからずこういう事例があるから

「納車で廃車」みたいに言われちゃうんですよね。

もうちっとオートバイと真摯に向き合ってもいいんじゃないかなと。

やっぱり愛されたいじゃないですかオートバイに。


かなりカーボン積層していますね。

これは粗悪オイルで高負荷で酷使されてる郵政車両に近いコンディションです。


ヘッドもモリモリ、、

EXのバルブがだいぶ沈んでいます。


こうなってくるとタペットクリアランスがどんどん詰まって

バルブがきちんと閉まりきらなくなったり

カーボン噛んで圧縮抜けを起こしたりしますね。

当然タペット調整は以前行っていますが手遅れだったようで

今更調整してもバルブの当たり面も広くなるので面圧が下がり

圧縮が抜けやすくなりますので

今回の症状とビンゴです。


お見事な抜けっぷりです。

と、まぁ理屈ではわかっていても私はエンジン組めるような人ではないので

信頼できる内燃機屋さんにヘッドを丸投げしまして。

丸投げというとアレですが

ド素人がああだこうだ言わなくてもプロはモノ見たらわかってくれますからね。


そいでもって内燃機屋さんから戻ってきたヘッドがコチラ。

バルブガイド入れ替え

EXバルブシート製作と打ち替え

バルブ交換とシートカットに擦り合わせ

勿論セット長合わせやリーマ加工、シート打ち替えにあたってザグリ加工と


ビシバシに仕上げていただきました。

流石というか流石ですね。

やはり餅は餅屋、内燃機は内燃機です。


この状態からであればマメにメンテして適切に扱えば長持ちする事でしょう。


後は新品ガスケットできちんと組んでいくだけ。

なんですが、やっぱアイアンは組みにくい、、

エボはその辺とても組みやすいんですよね。

如何にエボモーターがフレンドリーかわかりますが

まぁアレもアレなりに注意して組まないと色々不具合起こります。

まぁウチで出来るのは腰上までが限度ですのでぎ承知おきください。


一先ずエンジン始動すべくキャブをOHしてイグニッションコイル設置。

ココにコイル付けるのは好きじゃないんですが

どうしてもスペースがありませんでした。


マグは抜いてブロックオフ、ダイナSとNSG組み込み、点火時期調整。


ところでダイナSですが、最近センサーローターがガバナーの軸にハマりにくかったり

ガバナーへの引っ掛かりがキツくてスムーズに動かない物が散見されるのですが

ここのところベースプレートのバリが大きくてスルスル回らない個体が多い。

ダイナSを組む際はベースプレートに2箇所あるこのバリを削っておくと

点火時期調整が非常にやりやすくなりますよ。

勿論カムカバー側も綺麗にしておくのは大前提です。


しっかりオイル送ってあげて簡易配線でイグニッションON。

キック数発で無事始動に成功しました。

当たり前っちゃ当たり前ですが。

もはや言い尽くされていますが、エンジンが生き返るのは何度経験しても嬉しい。

オイル漏れも異音もありませんので

お次はバッテリーの搭載

それに伴いハーネス引き直しと継続検査を受けて走り込みへと続きます。


では!